アルパカログ

プログラミングとマネジメントがメインです。時々エモいのも書きます。

エンジニアにとってマネジメントが「よくわからない」理由

マネジメントというと、みなさんはどんなイメージをお持ちだろうか?

悩んでいる部下をサシ飲みに誘って話を聞くとか、そんな感じだろうか。さすがにそれは古すぎるかな。

マネジメントに携わる前の私は「何をしているのかよくわからない」というのが率直な印象だった。マネジメントに携わるようになった今でも「マネジメントのために何をしているのか?」と問われて一言で答えるのは難しい。時と場合、そして人によるからだ。

私の師は、エンジニアではないがエンジニアのマネジメントをする人がこれから増えるだろうと予想している。エンジニアリングマネジメントという言葉を最近よく聞くようになったのは、マネジメントに興味を持つエンジニアが極端に少ないという背景があるからだ。だから、この流れは自然と言える。

では、エンジニアがマネジメントを学ぶ必要がないかと言うと、そうではない。技術への理解があるし、エンジニアに評価されたいエンジニアは多い。

マネジメントの魅力を伝えていくのもマネージャーの役割だ。「マネジメントはよくわからない」というイメージが先行して、マネジメントがキャリアの選択肢から外れてしまうのは悲しい。だからこのエントリでは、エンジニアのキャリアを考えるにあたって参考になる書籍を紹介し、マネジメントに興味を持つきっかけを提供したい。

書籍からマネジメントキャリアを考える

エンジニアリングと同じで、マネジメントも専門知識を必要とするキャリアだ。エンジニアのためのマネジメントキャリアパスは、ジュニアからCTOまで段階を追って、業務の内容、気にすべきこと、苦労話などが著者の経験をもとに書かれていて、エンジニアがキャリアを考える上で必読の一冊と言える。

特に、「3.5 決断の時 −−技術職を貫くか、管理職への道を選ぶか」はキャリアに悩む全てのエンジニアに読んでほしい。技術職の理想と現実、管理職の理想と現実が、それぞれ対比して描かれている。例えば管理職だと、チームメンバーから慕われ、決定権を持ち、指導の効果を実感できる…そんな理想に反して現実は、口で伝えただけでは人はなかなか動いてくれない、自分はと言えば会議に明け暮れコードを書く時間はお茶を濁す程度しかない…といった感じだ。

光があれば影があるように、何事にも良い面と悪い面がある。けれどもマネジメントにおいては、上下の板挟みや人間関係の苦労といったネガティブな部分がクローズアップされやすいように思う。もちろん、マネジメントにもやりがいはある。人や組織の成長がそうだが、成長は、どこまでが本人の努力で、どこからがマネジメントのフォローによるものか明確に区切ることができない。二人三脚の成長を、「マネジメントのおかげでもある」と言い切れるほど自信に溢れたマネージャーは多くない1。だから、ネガティブな部分ばかり目立ってしまうのだろう。

そんなネガティブな部分が、マネジメントの「何をしているのかよくわからない」というイメージに拍車をかけている部分はあると思う。イメージだけでマネジメントを遠ざけてしまうのは良いアイデアとは言えない。しかし一方で、エンジニアだからこそ、マネジメントに得体の知れなさを感じてしまうというのも理解できる。

これまで5年以上マネジメントに携わってきて、こと人の問題においては「一般化できるものは何もない」と感じる。エンジニアリングであれば、ある程度「こういうときはこう」みたいな定石があるが、人の問題においては「Aさんにこうすると良かったからBさんにも」というわけにはいかないのである。問題を一般化できないことが、エンジニアにマネジメントを敬遠させる1つの要因になっているのではないだろうか。

興味を惹くかもしれない考え方

マネジメントのどんなところに人は興味を惹かれるのだろうか。「一般化できない人の問題に取り組む」だと少し漠然としすぎている気がする。興味を惹かれるか、つまり何をおもしろいと感じるかは人それぞれなので、マネジメントに対する考え方で興味を持つきっかけになりそうなものを取り上げたい。

「効果的なチームとは何か」をテーマにしたグーグルの研究によると、「心理的安全性」や「相互信頼」など5つ要素がチームの効果性に強く影響するとされている。中でも心理的安全性は最近よく取り上げられるので、みなさんも目にしたことがあるだろう。「組織の成長のため」というのが少し気恥ずかしく感じる人は、「組織の力学を知るため」という切り口でマネジメントを考えてみるのも良いかもしれない。

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また、エンジニアリング組織論への招待の冒頭で著者は、次のように述べている。

問題解決のためには、コードだけでなく、人々の思考・組織・ビジネスの「構造」こそリファクタリングしなければいけないと考えるようになりました。

リファクタリングというエンジニアリングの手法を、人や組織の問題に適用するという考え方は、私たちに「自分が持っているスキルや手法を、人や組織の問題に適用してもいい」という新しい気付きを与えてくれた点で非常に興味深い。こういう切り口でマネジメントを考えてみるのも良いだろう。

おわりに

大事なのは、マネジメントに興味がある人と、そうでない人の双方にとってキャリアが開かれていて、自身で選択できることだ。「マネジメントなんてやりたくないのに…」と思いながらマネジメントに携わってしまうと、本人だけでなくチームも不幸になる。一方で、マネジメントのキャリアについて考えるきっかけも必要だ。そう思ってこのエントリを書いた。


  1. マネジメントの成果をアピールすることの難しさについては以前「全然わからない。俺たちは雰囲気でマネージャーをやっている。」で述べた。